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07 惚れた

07 惚れた
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 開店初日は私、小林、高橋の3人で迎えた。

 まだコロナの真っ最中であり、GoToトラベルも始まっていない。

 ホテルはガラガラ。

 もちろん当店にもお客様が来るはずもなく、初日の営業は売上0で終わった。

 2日目も0であった。

 3日目は小林が休みで私と高橋で営業した。この日、ようやく売上が上がった。スタッフのLINEで小林にも初売上が上がったことを報告した。

 その日の営業が終了し、寮に帰ると、私個人のLINEに小林から連絡が入った。

部長、お帰りなさい。今窓から顔出せますか?

 小林の部屋は隣なので、私が帰ったのが物音でわかったのだろう。

 なんだろうと思い、特に返信もせずに窓から顔を出してみた。するとすでに小林が窓から顔を出していた。

「部長、お疲れさまです。初売上おめでとうございます。」

「お、おう、ありがとう。」

「よかったですね。LINEじゃなくて直接言いたくて。」

・・・可愛い。

 ただでさえ美人なのに、この短い会話で見せた笑顔がまためちゃくちゃ可愛い。部屋の明かりが小林の顔の半分を照らしているその光加減も絶妙に映り、正直正視できないくらい美しく見えた。

 間違いなくニヤけていたと思うが、なんとか誤魔化しつつ「おやすみ」を言って窓を閉めた。

 次の日、また3人での勤務だったが、私が別件の用事があり、開店時間に間に合うか間に合わないかのギリギリになる旨を二人に伝えていた。用事を済ませ店に着くと、小林がいない。高橋に小林は?と聞くと、忘れ物して一度寮に戻ったと。

 開店から30分くらいして小林が出勤してきた。

 出勤して着替えもせず、まっすぐ私のところに来て、

「部長、申し訳ありません。制服を忘れて取りに帰ったので遅刻してしまいました。もうこのようなことのないように気をつけます。」

 と、とてもちゃんとした謝罪をしてきた。普段の言動からこのようなちゃんとした謝罪をするところは想像できなかった。しかも、謝罪の間の申し訳なさそうな表情がまたとても可愛かった。ニヤけそうな顔を我慢して、これから気をつけるようにとだけ伝えた。

 前日の窓からの会話だけでなく、この謝罪でも私の心はギュッと掴まれた。もう完全に惚れていた。

 だがしかし、もちろん妻子ある身なので、どうこうしようとは思っていなかった。セクハラ・パワハラが厳しい時代でもあるし、特に女性ばかりの職場なので、その辺は特に気をつけていたということもある。また小さな職場なので、内部で色恋沙汰が起これば職場崩壊も目に見えている。

 その時はまだ自分を厳しく律していた。

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