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06 あるまじき心

06 あるまじき心
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 店舗に集合し、研修を始めた。

 私は他の仕事があるためつきっきりにはなれない。そのため、私がいるときはマッサージの研修を行い、いないときは小林に主導してもらって高橋とお互いに技術をすりあわせてもらうことにした。

 とはいえ、まだ彼女たちの技術をちゃんとは確認していないため、初日は私の体を使って店舗で提供するメニューをやってもらうことになった。

 オイルトリートメントとフェイシャルトリートメントをやってもらうことになり、経験の長い小林の施術を受けることにした。

 その技術はまったく問題なく、自信が伝わってくるようなしっかりした施術であった。高橋はまだそれほど経験が長くないことから、やや小林より不安があったため、小林に指導を依頼した。

 次の日、私が講師となってマッサージの研修を始めた。まずは二人に私が施術した。小林に施術するときには緊張する反面、嬉しい気持ちもあり、上司として、講師としてあるまじきよこしまな気持ちもあった。もちろんそれは押し殺して微塵も表には出さなかったが。

 研修自体は淡々と進み、数日後、一旦私だけ横浜に戻った。その間、研修などの宿題をだし、やることもリストアップして私のいない間も手持ち無沙汰にならないように配慮した。もちろん横浜にいる間も彼女たちといろいろ業務連絡を行い、彼女たちが不安にならないように気を使った。

 次の週、また熱海に行った。

 また私のマッサージの研修を行い、たくさん小林の身体に触れた。もちろんエッチな触り方ではないので色気もなにもないが、研修と称して彼女に触ることができるのが嬉しかった。もう思考はほとんど童貞であった。自分でも情けないが、家庭のある身なのでそれだけで満足だった。

 彼女たちもちゃんと研修をやっていたようで、また二人に施術してもらったが開店するには問題のないレベルとなっていた。問題は私が教えるメニューだけであった。

 特に小林は指圧系のマッサージが受けるのも施術するのも好きではないとはっきり言っていた。それを好きにさせるのも私の仕事だと思い、小林に対してはしっかり研修を行った。これは本当に真面目にちゃんとやっていた。よこしまな気持ちは押し殺して。

 ところが、この研修期間中にまた彼女に心惹かれる事が起こった。

 研修中に、彼女からキッチンの戸棚が壊れたから直してほしいとの相談があった。部屋の作りは私の部屋と同じはずで、壊れた状況を聞いても簡単に直りそうだったので、もし私が直してよければすぐ直すし、嫌であれば管理会社に頼むよ、と言ったら私でいいと彼女が言った。

 研修終了後、寮に帰ってからすぐ私は彼女の部屋に行き、戸棚を修理した。簡単に直ったが、彼女がついでにトイレの便座も外れそうになってるから直してほしいと言ってきた。それもちょっとネジを締めれば直るものだったので、すぐ直してあげた。

 すると彼女は、

「ありがとうございます!助かりました!私こういうの直したりするの得意じゃなくて。」

と、満面の笑みの後に申し訳無さそうな困った顔で言った。

 いい年して何を言ってるんだか、という感じだが、本当に胸がドキッ!とした。可愛い。彼女が喜んでくれたことも嬉しいが、その顔を見れたことが嬉しかった。キッチンもトイレも玄関からすぐのところにあり、その奥が部屋になっている。私は嫌われないように、できるだけ奥の部屋に目線を送らないように気をつけていた。帰り際にちらっと見た感じでは、彼女の部屋はおしゃれに装飾されており、そんな部屋も彼女に心惹かれる一因となった。

 そんなことがありながらも無事に研修も進み、いよいよ開店を迎えた。

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